平成29年3月8日(水)、平成29年2月福岡県議会定例会で、「農福連携について」と「ふくおか未来人材について~農業系の県立高校におけるGAP取得の推進」を以下の通り一般質問させていただきました。
自民党県議団の岳康宏です。
通告に従って、一般質問させていただきます。
まず初めに、農福連携についてお尋ねします。
昨年(2016年)8月24日、生涯健康安心社会調査特別委員会での管外視察で、北海道月形町を訪ねました。
つきがた農福交流推進協議会が進める農福連携は2年目を迎え、障害者受け入れ農家と農家で働く障害者がともに増えていて、農福連携は、農業側からも福祉側からも歓迎されているとのことでした。
園芸農業は手間のかかる仕事が多く、人手が足りないのが実態で、障害者の方々の作業は、草取りに始まり、収穫物の運搬、支柱やネットの設置、段ボールの組み立てなど、経験を積むごとに作業幅も広がっているとお聞きしました。
農業者側からも「適材適所でお願いする仕事は結構あり、助かっている」との声があり、障害者の方々も「楽な仕事ばかりではないが、充実感があり、できる仕事が増えてうれしい」などの声が聞かれました。
そんな中、昨年(2016年)12月12日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から「持続可能性に配慮した食材(農産物・畜産物・水産物)の調達基準について」案が示されました。
今月、この東京オリンピック・パラリンピック開催時に提供される食の基準が決まるといわれていますが、推奨される事項として①オーガニック(有機)食材、②農業と福祉が連携し障害者を雇用して生産される食材、③国際認証を得ている食材が優先的に使われることになるとのことです。
つまり、農福連携によって、障害者の方々が主体的に作った食材が、東京オリンピック・パラリンピックに出場する選手の食べる食事として使われる可能性があるということになります。
オリンピック期間中に必要な食材は約1500万食で、事前キャンプで選手に提供する食材まで合わせれば、かなりの量となり、このうちどれだけの食材を日本の農産物で賄えるかが課題となっています。
せっかく日本で開かれるオリンピックですので、より多くの選手や外国人観光客に日本の食材の素晴らしさをアピールしたいですし、そのための準備は怠りなく進めたいものです。
そこで、知事にお尋ねします。
まず、福岡県における農福連携の取り組みについて、現状はどのような取り組みがなされているのかお教えください。
さて、栽培から出荷までの各工程を生産者自ら点検、評価をする、いわゆるGAP(Good Agricultural practiceの略で、直訳すると、農業生産工程管理という意味)などの国際認証には、ご存知のように、農産物や畜産物を対象にした最も高いレベルのグローバルGAP、日本版のJ-GAPアドバンスなどがあります。
この度、我が党の代表質問でもご紹介しましたが、福岡県久留米市のサラダ菜がグローバルGAPの資格を取得したことは福岡県における先進事例として勇気づけられるものです。
私は、身体障害者支援施設に通う障害者の方々が、東京オリンピック・パラリンピックを当面の目標として農産物を作ることで、ひょっとすると、金メダルを獲った選手に自分たちの作ったものを食べていただけるかもしれないという思いで、日ごろの農作業に励んでもらえたら、障害者の方々のモチベーションが上がり、作物を作る喜び、仕事への誇りが芽生え、精神的に良い影響を与えるのではないかと考えます。
また、オリンピックでは、世界各国からマスメディア関係者が集まり、プレスセンターが設置されます。
障害者が主体的に作った食材が彼らの目に留まり、マスコミに取りあげられれば、問い合わせや購買も増え、作る喜びだけでなく、もしかすると、工賃アップにもつながり、自立を一層促すことができるかもしれません。
そこで、知事に質問いたします。
現在検討されている東京オリンピック・パラリンピックの調達基準をクリアすることを一つの目標として、福岡県内の障害者支援施設や地域住民が連携して農福連携を進めることで、障害者の方々の地域との関わりがさらに深まると考えますが、今後、福岡県として農福連携をいかに進めていくおつもりか、知事の見解をお聞かせください。
次に、「ふくおか未来人材の育成」についてお尋ねします。
現在、農業系の県立高校でグローバルGAPを取得しているのは、リンゴ栽培に取り組む青森県立五所川原農業高校が唯一取得しており、国際的な視野に立った新たな農業と地域人材育成に取り組んでいると聞いています。
そこで、まず教育長に質問いたします。
福岡県にある農業系の県立高校におけるGAP関連の取り組みはどのようになっているのか、お尋ねします。
ふくおか未来人材の育成とは、グローバルな視野に立って、地域に貢献し、活躍する人材を育てることと理解しておりますが、まさに、先ほどの農福連携を通じて、障害を持った方々が、オリンピック・パラリンピックのような国際大会を意識したり、グローバルGAPのような国際認証取得を目指したりして、地域の中で、日々の活動に取り組むことができれば、まさに「ふくおか未来人材」の育成の理念に合致すると思います。
同様に、福岡県下で農業系の県立高校に入学した若者が、日ごろの授業を通じて、国際的な認証制度であるグローバルGAPなどを学ぶことは、まさに「ふくおか未来人材」の育成につながると考えます。
なぜなら、厳しい環境にある日本の農業に、あえて高い志を持って入学してきた生徒たちは、限りない可能性や希望を秘め、意欲ある成長が期待できるからです。
今は、まだ国際認証取得に際して、多額の費用が掛かり、外国基準で書類の翻訳が難しいようです。
しかし、青森県立五所川原高校は、次の目標として、リンゴに加えコメにも挑戦し、そのノウハウを地域に広めるために、若者の発想で、タブレットを用いた学習支援システム(アプリ)の開発を大手IT企業と進めています。
そして、地域はもとより行政機関や他の農業系の県立高校、更には一般の方々にもグローバルGAPを理解してもらう目的で、審査の過程を公開することにしたとも聞いています。
このように、5か月で国際認証を生徒みんなの力で取得できたことが自信となり、次年度は、さらに、生徒が主体的、能動的に学習に取り組むことができており、まさに、アクティブラーニングの実践につながっていると感じます。
そこで、質問いたします。
GAPに関する学習を行うことで、生徒にどのような効果が期待されるのか、教育長のご見解をお聞かせください。
国際認証取得の流れを強めるためには、物流業者や小売業者の協力が不可欠です。
そのような中、西鉄ストアさんの売り場には、国際認証を取得した農産物の棚が設置され、少しずつ地元スーパーの応援体制も整ってきているように感じます。
人手不足解消が望まれる農業にあって、農業系の県立高校に進学した生徒が、国際的な視野を持ちながら、卒業後も地域の方々に学校で学んだことを分かりやすく伝え、地域社会や世界を意識した取り組みを行えるようにするためにも、農業系の県立高校におけるグローバルGAP取得を積極的に推進していくことは意義深いと思っています。
必ずや生徒たちは若い力で、日本の、福岡県の農業を活性化してくれると思います。
そこで、最後に質問いたします。
農業系の県立高校において、GAPに関する学習を今後どのように展開していくのか、教育長のお考えをお伺いして、私からの質問を終わります。
ありがとうございました。
(知事答弁)
問 農福連携の取り組みの現状について
○障害者の就労支援として、約50の障害者支援施設がコメや野菜の栽培に取り組んでいる。その多くは、まだ、生産及び流通とともに小規模にとどまっているが、近年、いくつかの施設においては、耕作放棄地を利用したコメ作りや、減農薬野菜の栽培などについて、地元農家や流通業者との連携に向けた協議が始まっている。
また、ナス、ほうれん草などの園芸農家において、苗の定植、収穫、出荷作業などで障害者を雇用している事例が約20件ある。
問 農福連携の今後の取り組みについて
○農福連携は、障害者の新しい職域を開拓し、自立と地域社会への参加を促進する上で、有効な取り組みであると考えている。
○農業現場で障害者の雇用を進めるためには、障害者の特性に応じて対応可能な作業を選定するなどの配慮が必要である。
このため、県では、農業分野における障害者就労促進に向けたマニュアルを作成し、農業者からの相談に対応しているほか、障害者支援施設の関係者に対しては、全国の取組事例や専門家派遣などの支援策の説明会を実施し、農業参入への気運の醸成を図っているところである。
○現在、東京オリンピック・パラリンピック大会の食材調達基準が検討されており、GAPの認証を取得した上で、障害者が主体的に携わって生産した農産物や畜産物は推奨される事項の一つに加わると聞いている。
このため、この食材調達基準の今後の動向を把握し、農業者はもとより、施設に対しても情報提供を行ってまいる。
○また、来年度は新たに、施設への技術指導のための地元農業者の派遣や、生産物の農福連携マルシェの開催、障害者雇用に向けた農業者への研修会の実施などに取り組むこととしている。
これらの取り組みを通じて、県内の農福連携の成功事例を創出してまいりたいと考えている。
(教育長答弁)
問 県立高校におけるGAP関連の取り組みについて
○現在、文部科学省のSPH(スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール)に指定されている県立福岡農業高校において、高度農業技術人材育成事業に取り組んでいる。この取り組みの中で、GAPに関する生徒の研修を九州沖縄農業研究センターにおいて実施し、必要な知識や技術を学んでいる。
問 GAPに関する学習を行うことの生徒への効果について
○生産から出荷までの工程管理を明らかにするGAPに関する高い知識と技術を有していることにより、生徒が将来、農業生産に従事する際に、食品の安全性の向上、環境の保全、労働安全の確保、資材コストの低減などを図る上で役立つものと考えている。
○また、農業生産の競争力の向上や持続可能な社会の実現を担うことができる農業従事者の育成という観点からも、意義ある学習であると考えている。
問 農業系の県立高校におけるGAPに関する学習の今後の展開について
○県立福岡農業高校で実施しているSPHの取り組みの中で、GAPに関する教育活動を検証し、必要な改善を行うとともに、成果の蓄積を図る。
○また、その成果を活かし、GAPに関する指導の取り組みを関係機関と連携して県下の農業系の高校に広める。